2014年9月5日金曜日

有名企業の課題図書 ~あの会社の社員は何を読まされているのか~ 前編

丸善日本橋店の試み

有名企業の課題図書

丸善の日本橋店2階で、『有名企業の課題図書』と称したフェアが開催されていた。業種ごとに課題図書としている書籍が並べられているだけの展示だが、他社の社員教育の一端に触れることができ、非常に興味深い。

このフェアは丸善日本橋店で2014年8月31日まで開催されていた。

調査方法は明らかではないし、社名は伏せてあるばかりか、業種の設定区分も想像する他ないが、何らかの実際の会社(丸善曰く「有名企業」)の課題図書であったことは事実だろう。

思わず書名をメモしてしまったので、公開したいと思う。興味を持った方は是非、(フェアは終わっているが)丸善日本橋店へ足を運んでみてほしい。

なお、書籍の数が多いため、3分割して投稿する予定である。

紹介された業種

扱われていた業種は以下の通りである。
  1. 製造業
  2. サービス業界
  3. 電機業界
  4. 情報通信業界
  5. 金融業界
  6. 不動産業界
  7. 食品業界
  8. 小売業
  9. 流通業界
  10. 商社
  11. 製薬業界
  12. 医療機器業界
  13. 教育機関
  14. コンサルティング
  15. 各種業界
「○○業」と「○○業界」とで表記が分かれていることに意味があるのかどうか不明だが、丸善で紹介されていた通りの名前に従うものとする。


前編(この記事)では1.製造業から4.情報通信業界までを紹介する。


1.製造業

製造業の課題図書

見える化-強い企業をつくる「見える」仕組み

現場力を鍛える-「強い現場」をつくる7つの条件



2052 今後40年のグローバル予測

ディズニーの現場力

勝つ組織




最新版〈入門の入門〉経営のしくみ

成功と失敗の事例に学ぶ 戦略ケースの教科書

知識創造企業



誰でもすぐにできる 売上が上がるキャッチコピーの作り方

プロフェッショナル電話力 話し方・聞き方講座

凡人が最強営業マンに変わる魔法のセールストーク



感想

製造業と書くだけでは領域が広すぎる気がするが、「電機業界」「食品業界」が区別されているため、対象は素材や部品メーカーやプラントメーカーなどだろうか?

『見える化』は世に出てから10年が経とうというしているにも関わらず、未だにビジネスマン必携の書として名が挙がり続ける遠藤功の傑作である。
「見える化」という語は今や自然に使われる語になり、この書のことを意識せずに使われることも多くなってきた。この書の影響力が伺える。
課題図書に設定されるまでもなく、上司や先輩などに薦められて手にする人も多い本ではないか。『現場力を鍛える』『ねばちっこい経営』と併せて読むことをおすすめする。

課題図書の調査対象が何社あったのかは分からないが、いずれも新入社員向けの課題図書なのではないかと思われる。だが、それが正しいとすると、製造業の会社が新入社員に対して経営そのものに関する書籍を3冊も読ませるというのは少し意外である。
今やどんな会社でも社員に経営的視点を要求しているということだろうか。コンサルティング会社には様々な企業から「社内の選抜メンバー向けのマネジメントや戦略に関する講座」の依頼が舞い込んでくるが、この課題図書もそうした活動の一貫だということか。

『戦略ケースの教科書』は、新人コンサルタントの中でよく話題に上がる書籍である。所謂フレームワークに強引に結びつけている感は否めないが、戦略の変遷や数字の変化などを細かく調べてあり、課題と効果に対する目の付け所を教えてくれる。


2.サービス業

サービス業の課題図書

究極のセールスレター

究極のマーケティングプラン

ある広告人の告白

「売る」広告



アメーバ経営

ストーリーとしての競争戦略

イノベーションの本質

ロジカル・セリング



NLPのことがよくわかり使える本

さあ、才能に目覚めよう

目標を「達成する人」と「達成しない人」の習慣

新幹線 お掃除の天使たち



感想

これもまた「サービス業」では領域が広すぎて全く会社の想像が付かない。

広告関連の書籍が目立ち、またセールス系の書籍が複数あったり、カウンセリングに使われるNLP(神経言語プログラミング)の書籍もあったり、営業色の強いセレクトであることは疑いがない。

この中で読んだことがあるのは『ストーリーとしての競争戦略』のみだった。競合他社との戦い方に興味はあるが、戦略というものが何なのか全く分からないという人に薦められる、比較的ライトな読み物系の戦略本である。


3.電機業界

電機業界の課題図書

役員の法律知識がよくわかる!取締役になったら「初めに」読む本

中期経営計画の立て方・使い方

プロジェクトコスト見積もり入門



感想

見るからに管理職や役員になった人向けのセレクトである。残念ながら私は取締役ではないし、プロジェクトコストの見積もりは手伝ったことがある程度、中経の設定など関わったこともなく、何より上のいずれも読んでいないのでコメントは差し控える。


4.情報通信業界

情報通信業界の課題図書

PDCAが面白いほどできる本

一日も早く起業したい人が「やっておくべきこと・知っておくべきこと」

残業ゼロ!仕事が3倍速くなるダンドリ仕事術

絶妙な「報・連・相」の技術



自分の小さな「箱」から脱出する方法

僕が電通を辞める日に絶対伝えたかった79の仕事の話

月曜日の朝からやる気になる働き方

社員を大切にする会社 ―― 5万人と歩んだ企業変革のストーリー



給与計算の事務がしっかりできる本

「情報管理」に強くなる法務戦略

電力と震災 東北「復興」電力物語

ビジョナリー・カンパニー



感想

仕事術、仕事との向き合い方などの本が並び、また比較的ライトなものが多いことから、新入社員向けのセレクトであることが伺える。

『電力と震災 東北「復興」電力物語』が若干浮いているように見えるが、通信業界といえばSoftBankやKDDIが電力市場に参入しているので、自社の新規事業に目を向けさせるための選択ではないかと推測される。

『ビジョナリー・カンパニー』は、おすすめできない。取り扱う内容が意図的に限定されている上、楽観的すぎる。もし気になるのであれば、まず『なぜビジネス書は間違うのか』を読むことを強く薦めたい。



(中編に続く)

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